
焼杉の外壁ってカッコいいけど
いろいろ疑問があるなあ…
本当に耐久性は十分?
市街地でも使えるの??

焼杉を採用した経験のある建築士がくわしく解説していきます
目次
- 製造方法
- メリットとデメリット
- 参考価格
- 市街地でも使える?
- 戸建て住宅市場におけるシェア
- 住宅以外での採用例
- SNSを通じて世界中に広まった焼杉
- まとめ
製造方法
焼杉の製造方法は、手作業により焼く方法(手焼き)と工場でバーナーを使って焼く方法(バーナー焼き)があります。
手焼き
手焼きは、瀬戸内の島々で古くから伝わる伝統的な製法です。
3枚の杉板を三角形の筒状に縦置きし、丸めた新聞紙を使って着火します。
板の表面をしっかりと焼きつけることができ、深い炭素層を形成することができます。
この深い炭素層こそが60~70年ともいわれる耐久性の要因です。
バーナー焼き
バーナー焼きは、工場でベルトコンベヤーに載せた杉板を専用の機械を使って焼く方法です。
大量生産に向いていますが、手焼きと比較すると表面の炭素層が薄く、耐久性はやや劣ると言われています。

耐久性を重視するなら手焼きを選びましょう
メリットとデメリット
メリット
✅自然の素材であるため、経年後も美観が損なわれない
✅古民家から現代建築まで幅広いデザインに対応できる
✅表面に炭素層がコーティングされており、耐用年数が長い
✅メーカー製品ではないため、廃番になることはない
✅板材単体は軽量であるため、将来の張替え作業が比較的容易
デメリット
✅触れると炭が付着して汚れる
✅無垢材であるため、変形や隙間が生じることがある
✅台風などで物がぶつかってしまうと、表面が剥離してしまうことがある
✅基本的には受注生産であるため、納期に時間がかかる
デメリット対策としては、施工時に釘の間隔を狭くし、しっかりと下地胴縁に固定することで、変形や隙間の発生を未然に防ぎます。
また、表面が剥離した場合は、上から塗装を施すか、部分的に張り替えます。
参考価格
宮城県の住宅で採用した焼杉の2018年11月当時の参考価格です。
採用したのは、森材木店(岡山県瀬戸内市牛窓町)です。
材木店に直発注することで諸経費を抑えることができました。
焼杉板 5,700円/坪+消費税
目板 185円/本+消費税
送料 129,600円(岡山県~宮城県、消費税込み)


DIYで焼くことが出来れば、さらに費用を抑えることができます
市街地(準防火地域、法22条地域)内でも使える?
市街地(準防火地域、法22条区域)においても、「防火構造認定」の壁とすることで焼杉を使うことが出来ます。
防火構造認定について図を用いて解説します。

このように、焼杉を一番外側の化粧材とし、その内側に指定の構造用面材(吉野石膏「タイガーEXボード」等)を貼り、断熱材等を充填することで「防火構造認定」の外壁を形成することが可能です。
防火以外の性能については、防水性を透湿防水シート、耐震性を構造用面材、断熱性を高性能グラスウール、気密性を防湿気密シート、それぞれが担保し、高い性能の外壁(高断熱・高気密)を形成することが出来ます。
以上により、
準防火地域
延べ面積500㎡以下、平屋または2階建て の場合に使用可能です。
法22条区域(延焼の恐れのある範囲)
準防火地域と同様に、防火構造認定の壁とすることで使用可能です。
戸建て住宅におけるシェア
一般社団法人日本サッシ協会のR5年版『住宅用建材使用状況調査』によると、日本の戸建て住宅における木質系外壁のシェアは全体の0.6%です。

焼杉は木質系外壁の一種であるため、多く見積もっても1,000軒中3~6軒程度と推測できます。インターネットや雑誌で見かける程には普及していないことが分かります。
その原因としては、住宅供給側が木質系の扱いにくいさを理由に、あまり積極的に提案してこなかったからではないかと思います。
住宅以外での採用例
焼杉の外壁は和風の伝統的な住宅から、現代建築までさまざまなデザインに対応可能です。
以下はその代表的なものです。
・ラムネ温泉館 大分県竹田市
・伊丹十三記念館 愛媛県松山市
・COMICO ART HOUSE YUFUIN 大分県由布市
・高部公民館 長野県茅野市
・小泊Fuji 長野県富士見町

建築家として初めて焼杉を使用(2005年)し、世間に知らしめたのは建築家・建築歴史家の藤森照信さん
SNSを通じて世界中に広まった焼杉
焼杉は製造過程も含め、非常に動画や写真映えする素材と言えます。
そして、板材と燃料となる紙、広いスペースが用意出来れば、世界中どこでもつくることができます。
このような背景から、YouTubeやInstagramなどのSNSでバズコンテンツのひとつとなりました。
海外の人気DIY系YouTuberからも注目されており、「Yakisugi」、「Sho Sugi Ban」などのワードで検索するとたくさんの動画で世界中の焼杉を観ることが出来ます。また、その動画のコメント欄の反応からも海外からの関心の高さが感じられます。
まとめ
・耐久性の面から、炭素層の厚い手焼きの焼杉がお勧め
・施工時に板を胴縁にしっかりと固定し、変形や隙間の発生を未然に防ぐ
・不慮の災害等により表面が剥離した場合は、部分的に塗装を施すか、板を張り替える
・費用を抑えたい場合は、材木店から直接買う
・市街地(準防火地域、法22条区域)においても使用できる
・和風から現代建築までさまざまなデザインに対応可能
・動画や写真映えする素材で、世界中で人気となっている
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